NZ最後の夜。

New Zealandを出発して日本に帰る。飛行機の中でブログを書く。

 

飛行機に一人で乗るのにも少しずつ慣れてくるのかな。これから。

 

ここ8年間、飛行機に乗ると、いつも隣には彼がいて、同じ映画を見たり、この映画面白かったよ、なんて話したり、ゲームしたりして飛行機の中を過ごしていたけど、今は一人なんだよな。映画を最後までじっとして見れないタイプだから、飛行機って本当に手持ち無沙汰になってしまうなって改めて思う。二人でいたらLCCでも平気だったのにね。

 

この1週間で精神がだいぶ削られた。

コロナウィルスにより、NZ政府が国境封鎖を決め、飛行機の便数も大幅に無くなり、4月以降NZからの日本行きの飛行機はほとんどない。(調べた限り、経由便でもあまり見つからなかった)。シンガポール航空とかはあったけど、シンガポールも国境封鎖を決めたので、その飛行機は実際飛ばない。

 

もしかしたら出れないかも、なんて半ば覚悟したけど、出ると決めたら、その気持ちはどんどん強くなり毎日、気が気じゃなかった。

 

結局のところ、出て正解なのか不正解だったのかはわからないけど、それでも後悔はしていない。

NZにいたら職業柄(メンタルヘルスの施設)、仕事は確実にあったけど、日本に帰ったら一からの就職活動だし、状況も状況だ。

でも、あそこにいては行けなかった。帰国して2ヶ月、楽しくなかったし、前に向ける気が全くしなかった。自分のメンタルヘルスケアが少しもできてなくて仕事と日常の境界線もひけていなかった。クライエントさんの話を聞いて自分に置き換えてしまったりとか普通にした。これじゃダメだなって毎日思っていた。

 

だから、木曜日にNZ国境封鎖の放送を受けたとき即帰国を決めた。金曜日に退職願をだし、火曜日の早朝(今朝)に出発した。

 

早かった。

 

会いたい人たちみんなにお別れを言えなかったのは本当に心残りだけれども、どうしても会わなきゃ行けなかった人たちには会えた気がする。

NZの家族のような人たち。それでも、元彼との一件で僕が一方的に会うのをやめた人たち。

やっぱり彼らと離れたのがずっと心の底で苦しくて。2ヶ月間、今まではいた元彼以外の話し相手すらもいなくなったのが本当に辛くて、新しい友人を作る気にもなれず、塞ぎ込む日々が続いていた。

だから、最後に会いに行った。許す許さないとか関係なくて、ちゃんと良い終わり方をしたかった。

 

昔のような友達に戻れたかはわからないけれど、それでも、わだかまりはなくなったような気がする。

 

元彼にも出発の前夜(昨晩)にちゃんと会ってきた。

車のこととか家のこととかまだ終わってないことを話にいかなきゃいけないからそのことを事務的に話に行くつもりだった。

 

 

ちょうど元彼が今も住んでいる家(僕が前に住んでいた家)のフラットメートの誕生日だったから、みんなで夜ご飯を食べた後、彼と二人っきりになる。

 

彼が尋ねる。

 

パッキングは終わったの?

 

終わったよ。車にスーツケースも積んである。

 

そう。まだ、家になおきの服が残ってるから、入れてあげるから持ってきなよ。

 

わかった。持ってくるよ。

 

彼の部屋にスーツケースを持っていく。

 

他愛もない話をする。

まるで何もなかったかのように。

 

洋服をタンスから出している間、僕はベッドで横になり、天井を見上げる。

 

少しして元彼の泣いている声が聞こえる。

 

彼が僕がぐちゃぐちゃにスーツケースに入れた洋服たちを1枚1枚丁寧に畳んでくれていた。

 

泣きながら畳んでいた。

 

次の彼氏ができたら、ちゃんとするんだよ。

ちゃんと綺麗に洋服を畳んでスーツケースに入れるんだよ。もう畳んで入れてくれる人いないんだよ。

泣いていた。

 

涙がポタポタ垂れるから洋服が濡れちゃうね。

なんていいながら。

 

それから、昔の話をする。

初めてあった時のこと。初めて彼の親にあった時のこと。初めてうちの親にあった時のこと。

たくさんお互い支え合って助け合っていろんな思い出を作ってきたのに、先に諦めてごめんね。なんて言われるとなんて言っていいのかわからなくて。

 

二人で声に出して泣く。

 

声に出して泣いて、パッキングが終わる頃になると、彼が言う。お腹すいたね。って。

 

そうだった。8年間、旅行の前夜、スーツケースに荷物入れるのはいつも彼の役目で、終わった頃になると、お腹が空いた。って言って、僕が家にあるもので何かを作った。

 

オムレツでも作るか。

 

トマトと玉ねぎのフィリピンのオムレツ。それに少し魚臭いフィリピンのソース。あのソースは何が美味しいのか最後までわからなかったけど、オムレツを作るといつもそのソースをかける。

相変わらず、どんな味でもただのオムレツでも美味しい美味しいって食べてくれるのは変わらなくて。ソースの味じゃん。って思いながら。でも、誰かが自分のためだけに作ってくれる料理って、それだけで美味しいんだよな。なんて思う。

 

それから、元彼が空港まで送って行ってくれると言うから、早朝3時出発だったからそのまま夜通し話をする。

 

空港までの車の中。

 

彼と初めてあった時に、よく二人で聞いていた曲を聴く。

 

Marry you

 

ブルーノマーズのMarry you

 

結婚しようってプロポーズをする曲。

 

21歳の僕らはこの曲をずっと聞いていた。

いつか結婚したいね、結婚できる国に引っ越して夢を叶えようね、なんて話をしながら。ビデオまで作ったりして。

 

二人ともそらで泣きながら歌う。

 

泣きながら歌う。

 

空港について、

二人で1時間まだ時間があったから席に座る。

席に座りながら、2枚、写真を撮る。

一枚は二人とも目を真っ赤にさせてまだカップルに見える写真。

 

それともう一枚。5年前にNZ行きの飛行機に乗る直前に撮った写真と同じ構図。

二人の靴だけを写した写真。

この2足の靴が僕らを運んでくれるんだね、なんてタイトルで彼がフェースブックか何かにあげた写真。

 

同じ写真を撮る。

今度は別々の道に進むんだね。

 

二人でまだ過去の話をたくさんする。

そして、これからの話をする。

 

話していると1時間なんてあっという間にたつ。もういかなきゃだね、なんて言うと、彼が泣きながら僕に指輪を手渡した。

付き合ってすぐに僕があげたペアリング。

先月家を出る時に僕がもういらないから、って置いてきたリング。捨ててね。って置いてきたリング。

 

お互いの8年間の思い出だから酸いも甘いも全部知っている指輪だから、この先守ってくれるから、持ってて。二人のお守りにしよう。

 

いつかまた、チャンスがあったら、きっとまた会おう。今度はもっと大人になってるよう努力するから。

 

もし、その機会があったら、そうだね。

なおきよりいい人なんて絶対いないから、後悔するのはそっちだから。なんて笑いながら僕が返す。

 

うん、そうだね。ほんとそうだよね。

 

なんて言ってあっちがまた泣く。

 

これから二人は違う人生を歩むんだね。

前に進んで幸せになろうね。

 

後ろ振り向かないで、行って。

彼が促す。

 

 

泣きながら前を向いて背筋を伸ばして歩く。

最後にドラマみたいに手だけあげて前を見ながらバイバイってしたけど、見たかな。

 

 

ちゃんと二人の間に愛があったんだね。

ちゃんと僕らは家族だったんだね。

嫌なことも裏切られたこともあったけど、最後こうやって終わりにできるんだね。

 

よかった。

 

人生の大切なチャプター、綺麗に終わりにできたね。

 

これから何があるかはわからないけど、お互いが前を向いて歩いていけるね。

 

きっとコロナがなかったら、

こんな風に会いに行くこともなかった。

 

友人たちとももっと疎遠になったかもしれない。

彼とも綺麗に終わらせられなかったかもしれない。

 

8年間、

しょっぱい思い出は山ほどあったけど、怒りなんて案外落ち着くもので、最後は綺麗にこうやって終われるんだね。

 

出会えてよかった。

 

二人とも次に会うときは、どう言う形であれ幸せになっているといい。

 

日本の生活、21歳からの初めての独身生活。

日本で仕事もしたことないけれど、

仕事、見つかるかな。

どうにかなるのかな。